松原哲明著「私の禅的生き方」を読みました

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どうも、メンヘラナマポおじさん(@MenhealerOjisan)です。

松原哲明さんの「私の禅的生き方」を読みました。

臨済宗の公案をわかりやすく解説されてました。

引用レビューします。

目次

生きながら死人になるということ

 執着を捨てる。それでも人間は執着を捨てられないでしょう、生きている限り。それなのに執着を捨てろということは、生きながら気分は死んでしまうことになっています。江戸時代、日本の至道無難禅師は、

 生きながら死人となり果てて、思うがままにするわざぞよき

と喝破しています。坐禅中に頭の中に現れる一切を、気持ちの中に生まれるすべてを、思うな、意識するな、ということです。

 あたかも死人のように、としたのです。死人となり果て成り果てろ、と。これは坐禅中の修行僧の心構えです。あたかも死人のように、何も考えることなく、執着することがなくなったら、そこのところが「無」であり「空」であります。

(中略)

 有名な「色即是空」は、色を即、是れ空にしなさいということですが、色とは、物事に執着することであり、即是、坐禅したら間髪を容れずに、即今、物事に執着するな、ということです。

 坐禅体験をしなくても、一人でぽつねんと生活していたら、頭や気持ちの中に雲霞の如く様々な思いが浮かぶでしょう。

 そいつにしがみつかず、執着せず、思いが浮かぶままに流していきる。そこが「色即是空」です。

僧堂では修行をしごきと勘違い

 読者の皆さんに言うが、臨済宗という禅宗と、浄土宗、真言宗、天台宗がどう違うのか、お分かりだろうか。

 一言で言うと、禅宗は信心であり、世界の他のすべての宗教は信仰である。この決定的な違いを、驚くなかれ、多くの禅僧でさえ区別できていない。

 「信心」とは、自分の本来の心を信じることである。自分の内側を見る。内側とは心である。何をもって見るのか。坐禅だ。心は見えないのに、坐禅で見えるのか。見えはしないが、それらしきを感得できるのだ。

 「信仰」とは、坐って心を見るのではなく、自分の外側に、ご神体、仏像を祀って、祈り、願い、拝むことだ。

「無生」とは何か

 和尚は言った。それではいかん。参禅しなさい。何を聞いたらいいか。仏法の極めつきの一句破なんですかと、老師に訊ねてきなさい。

 そこで、臨済は初めての参禅である。和尚に言われたように、老師に聞いた。

 「仏法の極めつきの一句は何ですか」と質問したが、その質問がまだ終わらないうちに、老師から棒で叩かれてしまう。質問の途中で一発、ばちんと叩かれた。

(中略)

 禅は何か。黄檗禅師は何が言いたくて棒を振るったのか。答えは心に一物も残らぬこと。無生である。『般若心経』に説いている「空」である。次のように。

 目に見えるものを心に残さないで即座に心から消去して無生。つまり、坐禅中は見るな。

 耳に聞いたものを心に残さず、即座に消去して無生。つまり坐禅中は聞くな。

 鼻に嗅いだ臭いを心に残さず、即座に消去して無生。つまり、坐禅中は香りをきくな。

 舌で触ったものを心に残さず、即座に消去して無生。つまり喋るな。

 臨済が棒で叩かれてしかられたのはここ。仏法の極めつきの一句、無生に反したからである。仏法の極めつきの一句と言い掛けて、黄檗禅師は、おい、しゃべるんじゃないと戒めた。喋ったら無生ではないだろう。  「口」が生じておるぞ、「声」が生じておるぞ、だ。黄檗禅師が棒を振るったそこに答えが丸出しになっているではないか。

無にするための六つの教え

 極めつけは、あと二つある。

 身体に触れたものを残さず即座に消去して無生にせよ。つまり、坐禅中は触れるな。

 最後は、意(こころ)に生じたものをこころに残さず即座に消去して無生。つまり、坐禅中は考えるな。

 この六つである。

 『般若心経』の「空」である。眼耳鼻舌身意を無にせよ。つまり経文の「無眼耳鼻舌身意」である。

 臨済は一回目の参禅ではなんの所得もなかった。和尚は臨済に言った。もう一度参禅して同じことをしてきなさいと。

 臨済は二回目を、言われた通り実行する。

 仏法の極めつきの一句はと言いかけたら、棒で叩かれた。

 和尚は三回目も行ってきなさいと言う。

 臨済は参禅した。しかし、一、二回目とまったく答えは同じであった。臨済の質問がまだ終わらないうちに棒を食らった。なぜ食らったのか臨済はわからない。

 参禅の場から、臨済はすごすごと下りてきて、和尚に言った。三回目も、同じ結果でした。私の質問がまだ終わらないのに老師は、私を叩きました。何が何だか分かりません。せっかく和尚からアドバイスを頂き、老師に参禅しましたが、ダメでした。何も分かりません。私には何かの障りがあって、理解ができないのでしょう。ここにいても埒が明きません。臨済は黄檗山を下山することにした。臨済は、仏法の海から抜け出ようとしている。心の嵐が吹きすさぶ。

(中略)

 臨済が下山の挨拶に来た。

 老師が言った。貴公、行脚に出るというのか。良いことだが、何処に行ってもいいというわけではないぞ。おかしな出来損ないの師匠についたら、貴公まで出来損ないになる。師匠は、正師でなければならない。貴公には、高安灘頭の大愚和尚が合いそうだ。

自分に合わないものは刈り取る

 さて、臨済は黄檗山の近くにある、大愚和尚の僧堂に入った。

 和尚が言った。貴公は、今までどこの僧堂にいたのか。

 臨済は言った。黄檗禅師のところからやって来ました。

 和尚は言った。そうか。黄檗和尚のところからか。ところで、黄檗和尚はどんなことを説いているのか。

 臨済はこれまでのいきさつを話した。私が、黄檗禅師に仏法の極めつきの一句は何ですかと質問したら、質問を遮って、棒で叩くのです。それも、三回参禅して三回とも同じく叩かれました。私に何か落ち度があったのでしょうか。

 和尚が言った。黄檗禅師は、老婆のように親切だな。貴公が気づくまで、赤子をあやす老婆の如くにだ。そうやって、貴公になんとか、仏法の極みを気づかせようと、苦心惨憺だ。なのに貴公はちっとも分かっておらん。愚かにも、自分に何か落ち度があったのではないかなんて、馬鹿をさらけ出している。

 臨済はやっと気がついた。そうか、お前が求めている極めつきは、無舌、喋らない「無生」であると黄檗禅師は示されたのか。臨済やっと、男になった。

私を振り回したものは、この自分だった

 さて、臨済は再び黄檗山に戻った。それを見た黄檗禅師が言った。なんだ貴公は。山から出ていったと思えば、また戻ってきやがって。どういう所見だ。

 臨済は言った。老師の老婆親切に感謝するためです。

 黄檗禅師は言った。貴公、今まで何処にいたのか。

 臨済は言った。老師に言われたように大愚禅師の僧堂におり、そこから来ました。

 黄檗禅師は言った。大愚に貴公は何を言ったのか。

 臨済は答えた。はい、自分は黄檗禅師に、仏法的的の大意はと訊ねたら、三度とも質問を遮って棒で叩かれたと言いました。

 黄檗禅師は独り言を言う。大愚の野郎、余計なことをしやがって、今度来たら一発ぶん殴ってやる、と。

 すると、臨済は、「大愚和尚が来るのを待つ事はないでしょう、今すぐに食らいなさい」と、黄檗禅師をぶん殴ってしまう。師匠すらいないとばかりに、黄檗禅師を殴って消し算したところである。臨済はすでに無生になっている。心中、一切何もない状態だ。

好きなことさえ心から消し去る

 臨済は、「行録」の中で、こんなことを書いた。

  わしが、黄檗山にいた時のことだ。作務をしていたら、師の黄檗禅師が現れた。だから、わしは、鍬の柄に寄りかかって立って迎えた。すると、黄檗禅師は、わしに言った。何だ、貴公はもう疲れたのか。わしは言った、まだ鍬も使っていないのに、疲れるはずはありませんとな。

 ここは、面白いところである。まだ鍬を使っていないのに疲れるはずはないでしょう。私は、坐禅して妄想、煩悩を奪い去っていますから、心が疲れるということはありませんよ。

 すると、黄檗禅師は、わしを棒で叩いた。本当にそうかな、自信たっぷりじゃないか、と。だから、わしは、黄檗禅師の叩いた棒を捕まえて、逆に黄檗禅師に突き返したんじゃ。黄檗禅師はひっくり返ってしもうた。

 ここも、実に面白い。棒を引ったくって、黄檗禅師をひっくり返した。何が面白いのか。臨済は心の中から黄檗禅師さえ排除した。「無生でっせ」だ。

 ひっくり返った黄檗禅師は、僧を呼んで言った。わしを起こしてくれ。僧は黄檗禅師を引き起こして言った。禅師、こんなことをされて、この無礼者を許すのですか。すると、黄檗禅師はよろよろと立ち上がるや、その僧を棒で打った。お前には、このやり取りを理解することはできん。

 そこで、臨済は、鍬で地面を掘って言った。諸方の僧堂では、こころに所有する一切を焼き払えと言うが、ここでは一切を坑に埋めてしまうぞ。

坐禅で妄想、煩悩を生き埋めにする

 原文では「活埋せん」とある。妄想、煩悩を生き埋めにしてやる。臨済将軍と言われた禅僧の意気はすさまじい。

 臨済は言った。そうやって、良いものも、悪いものも、坐禅して消し算する。一切を坑に埋めてしまう。そこを人生の目的と決めたら、ぐずぐずせずに坐禅することだ。

 臨済は言う。だから、坐禅三昧になって、妄想、煩悩を生き埋めにして、一切無生になったら、無生になるからあなたが生きた仏だ。ところが、自分は無生になったと思った途端、思いが生じる。有生に逆戻りだ。祖仏と変わらないと思った途端、有生だ。

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