どうも、メンヘラナマポおじさん(@MenhealerOjisan)です。
星覚さんの「坐ればわかる 大安心の禅入門」を読みました。
曹洞宗の大本山永平寺で三年間修行した方の本です。
永平寺での修行生活に関する記述を引用します。
護持と拝請
永平寺では個人が持てるモノが限られているため所有という概念があまりなく、多くのモノを工夫しながら共有しています。着物や雪駄、歯ブラシなど個々が使う生活用品を「行履物」と呼び、寮舎ごとに共有するものは末永く大切に使うという意味を込め「什物」と言います。行履物には、パンツは白のブリーフのみ、下着のシャツは白で首がU字、眼鏡は黒縁か縁なしといった具合に厳しい規格が定められていて、雲水一人分の行履物が畳半畳に収まります。みなが同じものを持っているため、すべての行履物には「星覚護持」などと自分の名前を書きます。
道元禅師に学ぶトイレの心得
永平寺に上山したその日から真っ先に覚えなくてはいけないことが東司、つまりトイレの厳格な作法でした。最初は古参がついてきて、細かい指導を受けます。
永平寺の東司ではスリッパや足袋などの履き物は脱いできれいに揃えておき、裸足で入ります。入ったら祀られているウスサマミョウオウに合掌一礼し、東司のための短いお経を唱えます。衣を丁寧にたたんで竿に掛け、音をさせないように静かに個室に向かいます。男性用の小便器はひとつもなく、すべてしゃがんで用を足す和式タイプの便器です。さすがに個室まで古参はついてきませんが、トイレの仕方を教わるのは赤ん坊のとき以来です。
永平寺の食事作法
「水」を扱う三黙道場の中でも代表的なのが、雲水がまず初めに覚える「応量器展鉢」の食事作法です。応量器とは食事の際に使う漆器で、漆によって何重にも塗られた黒い鉢の曲線は、シンプルな美しさがあります。入れ子式になった四つの鉢が匙、箸など食事に必要なすべての道具と共に一枚の布で包まれています。鉢を拡げて食事をいただくことから「展鉢」と呼ばれ非常に厳しい作法が定められています。
食事の合図の鳴らしものが鳴ると、それまで坐禅をしていた雲水たちは、応量器を開きます。浄人と呼ばれる給仕をする雲水から配られる食事を受け取っていただきます。食事は音を一切たててはいけません。箸を落としただけで、全山をお拝し懺悔してまわる「懺謝」の罰を受け、ご飯を入れる鉢である「頭鉢」を落としたら修行を終えて山を降りなければいけないほど厳格です。朝、昼、晩と少しずつ作法が違うのですべてを一通りできるようになるまで一ヶ月くらいはかかります。
(中略)
食事をいただいたあとは同じ鉢でお茶を飲み、お湯を注いで順に移し替えていき、その場で鉢を洗います。洗ったお湯は美味しくいただき、残った最後の一滴も浄人の差し出す手桶に集め、祈りを込めて近くを流れる小川に返します。永平寺では今日もこの作法通りに食事が行われ、水を世界に循環させています。
一日の始まりは寝ることから
寝るときは布団を縦に二つに折り、互い違いに重ねて手巾と腰紐で縛り、寝袋のような形にしてその中にみの虫のように潜り込んで寝ます。これを柏布団と呼びます。布団が柏葉なら雲水はあんこ、毎晩柏餅になった気分が味わえます。これは少ないスペースでたくさんの雲水が寝ることができる生活の知恵です。
六百キロをひたすら歩く
所持金はほとんどありませんでした。永平寺での修行に持参するのは涅槃金といって千円だけ。これはもし修行中に死んでしまったときにお経を上げてもらうためのお金です。
能力に依らない組織
禅寺では日常生活に必要な最低限の仕事のことを公務といいます。雲水は様々な寮舎に配属され、寮舎ごとに割り当てられた公務を行います。
例えば参詣者の宿泊のお世話をする接茶寮、生活用品を管理する知庫寮、料理を作る典座寮、山内(屋内屋外)の火防点検や土木関係の仕事をする直歳寮などというように、公務の内容は寮舎によって全く違います。
どの寮に配属になるかは「転役告報」によって決められます。転役告報は朝の食事のあと、突然、維那老師によって全山に告げられます。転役のあった日の朝はそれぞれが一斉に自分の荷物をまとめて各寮舎に移動するため、普段は静かな山内もてんやわんやです。概ね三~六ヶ月間同じ寮舎での生活が続き、次の転役告報があるとまた別の寮舎に転役していきます。いつ、どこに転役するかは自分で決めることも希望することもできません。人と話すのが好きだから接茶寮に行きたい、体力があるから直歳寮が向いているなど、本人の意思や能力とは全く関係なく、無作為に決められます。
転役になれば、それまでの経験に関係なく一から仕事を覚えなくてはなりません。
実は平等な年功序列
公務と転役を支えている重要な原則が年功序列です。
永平寺では生活のすべてがこの年功序列に従って行われます。永平寺の場合の年功は上山年月日による上山順です。名刹の跡取りであるとか、どこの大学を卒業したとか、他の道場で修行経験があるといったことは関係ありません。一日でも上山日が早ければ古参と呼ばれ、後から入ってきたものは古参に絶対的に従います。
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