鈴木秀子著「今、目の前のことに心を込めなさい」を読みました

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どうも、メンヘラナマポおじさん(@MenhealerOjisan)です。

鈴木秀子さんの「今、目の前のことに心を込めなさい」を読みました。

引用レビューします。

目次

誰の中にも輝くものがあります

 これはアメリカの中学校であった話です。

 一人の数学の先生がクラスを担任していました。担任のクラスは落ち着きのないクラスだったので、先生は、この子達をどうにかして落ち着かせたいと思いました。みんなが落ち着いて、いい雰囲気で仲良しになるには、どうしたらいいだろうと考えました。さんざん考えた末、あるアイデアが閃きました。

 先生はみんなに一枚ずつ紙を配りました。「ここにみんなの名前を書きなさい」と言って、まずクラスメイト全員の名前を紙に書かせました。

 「今から、みんなの観察力と、人を見抜く力をテストします」と先生は言いました。

 「それでは今から一人につき一分の時間をあげますから、一人ずつ、あの人はあんなところがいいなあ、この人のこういうところが好きだなあ、と思う点を書いてください。頭で考えないで、どんどん思い付くまま全員について書きます。それが試験の答案です」

 生徒たちは一人一人の名前が書いてある紙に、あの人は親切、あの人は声がきれい、あの人はとっても責任感がある、誠実だ、など、思い付くままをクラス中の友達について書きました。

 先生はこの言葉を集めて持って帰りました。そして、クラス中の子供たちが書いたものを今度は子供一人ずつに書き写しました。一人の子供に四十人の答案。それを全部先生がきれいな時で一枚ずつ書きました。そして、次の日にクラスに持って行って一人一人に通信簿を渡すようにあげたのです。

 先生は子供たちがそれを開いたとき、どんなに喜ぶだろうと思いました。ところが、生徒たちはシーンとしてなんにも言いませんでした。生徒は次の日に学校に来ても、なんにも言いません。先生はこんなことをしたけれど失敗だったと思いました。

 しかし、そのうちにだんだん教室が穏やかになっていきました。みんなが仲良しになっていったのです。先生はもしかしたらあれが効いたのかもしれないと思いました。

 先生はそれから学校が変わり、二十年近くが経ち、そのことはすっかり忘れていました。

 あるとき、先生は自分の故郷の町に帰ってきて、両親から教え子のマークが戦死して、お葬式があることを聞きました。

 それはベトナム戦争のときでした。先生はマークの葬式に参列しました。教え子たちもみんな集まってきていて、先生を懐かしく迎えてくれました。そして、翌日、マークの両親の家に集まろうと言うことになりました。

 次の日、先生はマークの友達が集まる前に、一足先にご両親にお会いしようと出掛けました。マークの両親は、先生が来てくださったことに感謝し嬉しく思いました。マークが戦死したときに身に付けていた洋服の中に、たったひとつだけ残っていたものがありました。

 それはお財布でした。その革のお財布にはお金は入っていませんでしたが、中に一枚の紙が入っていました。「これは先生の筆跡です」と言って、お父さんとお母さんはその紙を差し出しました。

 それは中学生のときに、みんなのいいところを一つずつ書いたあの紙でした。「マーク」と書いて、そこに四十人の子供たちが見つけてくれたマークの良さが四十個も書いてあったのです。マークはそれを戦死するまで、それもあの激しい戦争の最中にも肌身離さず持ち歩いていたのです。あのときは生徒たちに配っても誰も何も言わなかったのに、マークはこうして生涯持ち続けていてくれたのでした。

 しばらくして、マークの友達がみんな集まってきました。

 「マークは死ぬまでこれを持っていてくれたんだよ。ほら、みんなの書いてくれた言葉が一つずつここに載っている」と先生が言いました。

 すると、そこにいた凛々しい立派な青年たちが、ズボンのポケットから紙を出して、「先生、僕たちも持っているよ」と言いました。マークの葬儀に集まった教え子たちは、一人残らずその紙を取り出して先生に見せました。

 「マークの思いは僕たちと一緒だったと思う。自分ではそんな良さがあるなんて思いもしなかった。考えもしなかった。でも、自分の中にこんな良いところがあるということを友達が認めてくれた。それがとても嬉しかった。落ち込んでもうダメだと思うとき、あるいは、戦争でもういつ死ぬか、殺されるかという危険な状態にあっても、自分にはみんなが認めてくれた良さがあると思うと、また力が湧いてきた。そして生き延びてこられた」と、青年たちは口々に先生に話しました。

 先生は、あのとき、必死の思いで考えついたことでした。それがこんなにも青年たちに影響を与えている、ということを知って驚きました。それぞれが素晴らしい青年に成長していました。

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